4)「アレフベト」表
ヘブライ語の「アレフベト」表を見ると、「アレフ・ベト・ギメル・ダレト・ヘ・ヴァヴ・ザイン」は「',b,g,d,h,v,z」という順番で、英語の「A,B,C,D,E,F,G」と全然違っているので、これじゃ覚えられる訳がない、という気もしますが、覚えられる手掛かりはあります。
アルファベットの起源は「フェニキア文字」で、ヘブライ文字はフェニキア文字から直接作られました。ヘブライ文字とフェニキア文字は、アルファベットの文字数が同じ22文字で、文字の形と読み方が若干異なるものの、文字表の文字は1対1で対応します。
英語のアルファベットはローマ人が使ったラテン語の文字表が土台です。ラテン文字も元々はフェニキア文字で、フェニキア文字->ギリシャ文字->エトルリア文字->ラテン文字という経緯で発展しました。
ラテン文字へと発展する過程で、フェニキア文字の文字表が徐々に改変されていったのですが、それは根拠があっての改訂でした。なので、改訂の根拠から逆探知すれば、英語のアルファベットの並びからヘブライ語のアルフベト表の並びが再建できます。
文字は、エジプトやメソポタミアなど文明の起源の地で生まれました。最初はエジプトの絵文字でしたが、絵文字が意味する言葉の最初の音を、その絵文字が表す「音」にしました。例えば、雄牛は「アレフ」で、その言葉の最初の子音は「'」でした。そこで、雄牛の顔の絵文字「∀」が子音「'」を表す文字になりました。
最初は絵文字らしさが残っていた文字ですが、フェニキア人がそれを線主体の文字らしい外見に変え、それが色々な民族に受け継がれ、現代の様々なアルファベットに発展しました。
フェニキア人など、最初にアルファベットを作って使った人々の言語は、子音さえ書けば母音は文脈で分かる言語であったために、文字は子音だけでした。現代の若者のネット用語で「kwsk」と書いて「くわしく」と読むように、母語話者ならそれが普通にできた言語でした。ヘブライ語もこの仲間の中にいて、フェニキア文字をすぐに取り入れました。そして今でもヘブライ語の文字は子音だけです。アラビア語も同系で文字は子音だけですが、その文字数はヘブライ語より6個も多いです。子音だけで読める言語は子音の種類が多いのかもしれないですが、ヘブライ語は「マシ」な方です。
アルファベットはギリシャ人にも伝わりましたが、ギリシャ語は子音だけで分かるような言語ではなかったため、自分たちに不要な子音を母音として流用しました。そうして今の英語のような子音と母音が揃うアルファベットができました。
以下に、「各種文字対応表」を作成しました。
横列の意味は順に、「ヘブライ文字」「絵文字の意味」「文字名」「ヘブライ文字の読み方」「対応するフェニキア文字での読み方」「ギリシャ文字とその読み方」「エトルリア語での読み方」「ラテン語」 「英語」
表中、大文字のラテン文字は「文字」を、小文字のラテン文字は「読み方=音」を意味しています。
「絵文字の意味」は「諸説あり」で、エジプトからフェニキアに移った時点で絵文字の意味も変わっていたりします。また、学術的な定説が確定してない絵文字もあります。ここでは、それら「諸説」を参考にして、ヘブライ語の単語に近かったり、文字の形がそれらしかったりする「説」を随意に選んでいます。
各種文字対応表
| 番号 | 文字 | 絵文字 | 文字名 | 読み | フェ読 | ギリシャ | エト読 | ラテン | 英語 |
| 1 | א | 雄牛 | アレフ | ' | ' | A(a) | a | A | A |
| 2 | ב | 家 | ベト | b,v | b | B(b) | b | B | B |
| 3 | ג | ラクダ | ギメル | g | g | Γ(g) | k | C(k) | C |
| 4 | ד | 扉 | ダレト | d | d | Δ(d) | d | D | D |
| 5 | ה | 窓 | ヘ | h | h | E(e) | e | E | E |
| 6 | ו | 鉤 | ヴァヴ | v | w | (F)(w) | v | F | F |
| 7 | ז | 剣 | ザイン | z | z | Z(z) | ts | ||
| G | G | ||||||||
| 8 | ח | 柵 | ヘト | kh | kh | H(e:) | h | H | H |
| 9 | ט | 車輪 | テト | t | ṭ | Θ(tʰ) | tʰ | ||
| 10 | י | 手 | ヨド | y | y | I(i) | i,y | I(i,y) | I |
| J | |||||||||
| 11 | כ | 掌 | カフ | k,kh | k | K(k) | k | K | K |
| 12 | ל | 付き棒 | ラメド | l | l | Λ(l) | l | L | L |
| 13 | מ | 水 | メム | m | m | M(m) | m | M | M |
| 14 | נ | 蛇 | ヌン | n | n | N(n) | n | N | N |
| 15 | ס | 魚 | サメフ | s | s | Ξ(ks) | |||
| 16 | ע | 目 | アイン | ' | ' | O(o) | o | O | O |
| 17 | פ | 口 | ペ | p,f | p | Π(p) | p | P | P |
| 18 | צ | 植物 | ツァディ | ts | ṣ | sh | |||
| 19 | ק | 針穴 | コフ | k | q | (Q)(k) | q | Q(qu) | Q |
| 20 | ר | 頭 | レシュ | r | r | Ρ(r) | r | R | R |
| 21 | ש | 歯 | シン | sh,s | sh | Σ(s) | s | S | S |
| 22 | ת | 印 | タヴ | t | t | T(t) | t | T | T |
| U | |||||||||
| V(u,w) | V | ||||||||
| W | |||||||||
| X(kh) | z | X(ks) | X | ||||||
| Y(u,u:) | u | (Y) | Y | ||||||
| (Z) | Z |
文字表の改訂箇所
1)「アレフ・ベト・ギメル・ダレト・ヘ・ヴァヴ・ザイン」=>「A,B,C,D,E,F,G」
「アレフ」「א」/'/ =「A」
「無音の子音」でしたが、ギリシャ語で母音の/a/になりました。
「無音の子音」でしたが、ギリシャ語で母音の/a/になりました。
「ギメル」「ג」/g/ =「C」と「G」
ギリシャ語で「Γ」の形になり、この時はまだ/g/の音でした。これがエトルリアに伝わった時、エトルリア語には/g/の音が無かったので、この「Γ」を/k/と読み、「K」の字は使いませんでした。その時に「Γ」の形が丸くなって「C」に近くなりました。これがラテン語に伝わって、ラテン語でも「C」の文字を/k/と読み続けたのですが、ラテン語には/g/の音もあったので、/g/用の字が必要になりました。だから「C」の字にちょっと棒を足して「G」を作って、文字表の間に入れました。
ギリシャ語で「Γ」の形になり、この時はまだ/g/の音でした。これがエトルリアに伝わった時、エトルリア語には/g/の音が無かったので、この「Γ」を/k/と読み、「K」の字は使いませんでした。その時に「Γ」の形が丸くなって「C」に近くなりました。これがラテン語に伝わって、ラテン語でも「C」の文字を/k/と読み続けたのですが、ラテン語には/g/の音もあったので、/g/用の字が必要になりました。だから「C」の字にちょっと棒を足して「G」を作って、文字表の間に入れました。
「ヘ」「ה」/h/ =「E」
ヘブライ語でも弱い母音的な音ですが、ギリシャ語で母音の/e/になりました。
ヘブライ語でも弱い母音的な音ですが、ギリシャ語で母音の/e/になりました。
「ヴァヴ」「ו」/v/ =「F」
/v/の音はギリシャ語に無かったので、/w/と/u/の音に分けて新たな文字が作られました。/w/の音の文字は「F」の形に似ていました。エトルリア語ではこれを/v/の音で読み、ラテン語では/f/の音で読みました。アルファベット発祥の地では、ヘブライ語も含め、/f/用の字は無く「P」と同じ文字でした。音としての区別が無かったのかもしれません。ギリシャ語で作った「F」の文字は結局は使われず数字としてのみ使われました。「F」の字と同時に作られた/u/の音の文字は「Y」で、これはギリシャ語の文字表の最後に追加されました。
/v/の音はギリシャ語に無かったので、/w/と/u/の音に分けて新たな文字が作られました。/w/の音の文字は「F」の形に似ていました。エトルリア語ではこれを/v/の音で読み、ラテン語では/f/の音で読みました。アルファベット発祥の地では、ヘブライ語も含め、/f/用の字は無く「P」と同じ文字でした。音としての区別が無かったのかもしれません。ギリシャ語で作った「F」の文字は結局は使われず数字としてのみ使われました。「F」の字と同時に作られた/u/の音の文字は「Y」で、これはギリシャ語の文字表の最後に追加されました。
「ザイン」「ז」/z/
ギリシャ語では/z/の音のままでしたが、エトルリア語では/ts/の音として使われました。ラテン語には/z/も/ts/も無かったので、「Z」は文字表の一番後ろに回されてしまいました。その空いた箇所にローマ人は自ら作った「G」を入れました。
ギリシャ語では/z/の音のままでしたが、エトルリア語では/ts/の音として使われました。ラテン語には/z/も/ts/も無かったので、「Z」は文字表の一番後ろに回されてしまいました。その空いた箇所にローマ人は自ら作った「G」を入れました。
2)「ヘト・テト・ヨド・カフ・ラメド・メム・ヌン」=>「H,I,J,K,L,M,N」
「ヘト」「ח」/kh/ =「H」
ギリシャ語で長音の/e:/になりました。エトルリア語とラテン語では子音に戻って/h/になりました。
ギリシャ語で長音の/e:/になりました。エトルリア語とラテン語では子音に戻って/h/になりました。
「テト」「ט」/t/
元々は、普通の/t/音ではない咽頭化や有気化した/t/音に当てられる文字でした。ギリシャ語では「Θ」の文字です。現代ヘブライ語では普通の/t/音として使っています。エトルリア語ではまだ使用していましたが、ラテン語では文字表から消えました。
元々は、普通の/t/音ではない咽頭化や有気化した/t/音に当てられる文字でした。ギリシャ語では「Θ」の文字です。現代ヘブライ語では普通の/t/音として使っています。エトルリア語ではまだ使用していましたが、ラテン語では文字表から消えました。
「ヨド」「י」/y/ =「I」と「J」
ギリシャ語で母音/i/になりました。英語の「J」はラテン語には無くて、中世になってから/y/の音として「I」から分化させて作られ、「I」の直後に置かれました。
ギリシャ語で母音/i/になりました。英語の「J」はラテン語には無くて、中世になってから/y/の音として「I」から分化させて作られ、「I」の直後に置かれました。
3)「サメフ・アイン・ペ・ツァディ・コフ・レシュ・シン/スィン・タヴ」=>「O,P,Q,R,S,T」
「サメフ」「ס」/s/
元々は、普通の/s/の音で、ヘブライ語でもそのように使われます。ギリシャ語では/ks/の音として使われ、文字は「Ξ」になりましたが、この文字はエトルリア語とラテン語では使われずに削除されました。
元々は、普通の/s/の音で、ヘブライ語でもそのように使われます。ギリシャ語では/ks/の音として使われ、文字は「Ξ」になりましたが、この文字はエトルリア語とラテン語では使われずに削除されました。
「アイン」「ע」/'/ =「O」
「無音の子音」でしたが、ギリシャ語で母音の/o/になりました。
「無音の子音」でしたが、ギリシャ語で母音の/o/になりました。
「ペ」「פ」/p/ =「P」
ヘブライ語では/f/と読む時もあります。
ヘブライ語では/f/と読む時もあります。
「ツァディ」「צ」/ts/
元々は、普通の/s/の音ではない咽頭化や有気化した/s/音に当てられる文字でした。ヘブライ語では/ts/の音で使います。ギリシャ語とラテン語では必要なかったので使われませんでしたが、エトルリア語では/sh/の音として使いました。
元々は、普通の/s/の音ではない咽頭化や有気化した/s/音に当てられる文字でした。ヘブライ語では/ts/の音で使います。ギリシャ語とラテン語では必要なかったので使われませんでしたが、エトルリア語では/sh/の音として使いました。
「コフ」「ק」/k/ =「Q」
元々は、普通の/k/の音ではなくてもっと喉の奥から出す/q/という音に当てられる文字でしたが、ヘブライ語では普通の/k/の音です。ギリシャ語で「Q」になりましたが、文字としては使われず数字としてのみ使われました。エトルリア語とラテン語では/qu/の音として使われました。
元々は、普通の/k/の音ではなくてもっと喉の奥から出す/q/という音に当てられる文字でしたが、ヘブライ語では普通の/k/の音です。ギリシャ語で「Q」になりましたが、文字としては使われず数字としてのみ使われました。エトルリア語とラテン語では/qu/の音として使われました。
「シン/スィン」「ש」/s/,/sh/ =「S」
元々は/sh/の音でしたが、ヘブライ語では/sh/と/s/の読みをします。ギリシャ文字では「 Σ」で、音は/s/になりました。
元々は/sh/の音でしたが、ヘブライ語では/sh/と/s/の読みをします。ギリシャ文字では「 Σ」で、音は/s/になりました。
「タヴ」「ת」/t/ =「T」
普通の/t/の音で、原初のアルファベット表では最後の文字です。
普通の/t/の音で、原初のアルファベット表では最後の文字です。
4)その後の追加文字
「T」の後ろにある文字は、後継の文字表で付け加えられた文字です。
「V」はラテン文字で/u/と/w/の音として作られました。ギリシャ文字で/u/の音として創られた「Y」はラテン語では使いませんでした。
「U」は「J」と同じく中世になってから、/u/の音として「V」から分化させて作られました。
「W」は11Cになってから作られました。/v/と/w/の音が両方ある言語では、/w/を「VV」と書いて区別していたのですが「W」という一文字になりました。
「U」は「J」と同じく中世になってから、/u/の音として「V」から分化させて作られました。
「W」は11Cになってから作られました。/v/と/w/の音が両方ある言語では、/w/を「VV」と書いて区別していたのですが「W」という一文字になりました。
以上の様な経緯で、フェニキア文字からラテン文字に発展したのですが、この流れを逆に辿っていくと、「きらきら星」で歌える英語のアルファベットからヘブライ語の「アレフベト」を再現できます。
変化の早見表
| 英語 | A | B | C | D | E | F | G | |
| ↓ | A | B | G | D | H | V | Z | |
| ヘブ | ' | b | g | d | h | v | z | |
| 文字 | א | ב | ג | ד | ה | ו | ז | |
| 英語 | H | I | J | K | L | M | N | |
| ↓ | H | I | K | L | M | N | ||
| ヘブ | kh | t | y | k | l | m | n | |
| 文字 | ח | ט | י | כ | ל | מ | נ | |
| 英語 | O | P | Q | R | S | T | ||
| ↓ | O | P | Q | R | S | T | ||
| ヘブ | s | ' | p | ts | k | r | sh | t |
| 文字 | ס | ע | פ | צ | ק | ר | ש | ת |
「きらきら星」の歌では「L,M,N,O,P」の部分を速く歌わずに、「7,7,7,5調」で歌うヴァージョンが良いです。
英語のアルファベット歌 https://www.youtube.com/watch?v=jFENPuI4Rm4
英語のアルファベット歌 https://www.youtube.com/watch?v=jFENPuI4Rm4
「アレフベト」は「T」までなので、「きらきら星」の歌は、「A,B,C,D,E,F,G」「H,I,J,K,L,M,N」「O,P,Q,R,S,T」の3フレーズで終わります。最初の2フレーズは、改訂の根拠にのっとった「入れ替え」があるだけです。3フレーズめは、削られた箇所を元通りに補う必要があります。
ここでフォークダンサー特有のリズム感を生かして、「O,P,Q,R」の部分を「ア、1,2、ア、3,4」で歌って、「ア」の部分に、削除された「s」と「ts」を挿入すれば、「アレフベト」の順番を覚えられそうな気がします。「アレフベト」の歌もありますが、もう頭が柔らかくないので、知らない歌で知らない文字名など覚えられないです。

